人は環境の産物である。
CIMG2587


 環境は人の産物である。
太平洋戦争まっただ中、「天皇陛下バンザーイ」といって、
戦艦に突撃して行った人たちがいます。

そんなことができる人は
どのような感覚の持ち主だったのでしょうか。
戦争など経験したことのない世代の人たちからすれば
到底理解できないことです。

しかし、厳しい環境の中、すがるものがなく、
そういうときにあがめる人、高貴な人を作り、
その人のために生きることが美徳と教育されれば、
出来上がりです。
自己犠牲こそ美徳であると教育されれば、
喜んで命を捧げていくのでしょう。
そこに理由などありません。

日本が近隣諸国にしてきた戦争犯罪、
これも今の世代の人からしてみれば
理解できない事実でしょう。

南京大虐殺、従軍慰安婦、
目の前で怯えきった女性を輪姦する。
慰安婦狩りと称して暴力で少女を拉致する。
どうしてそんなことができたのでしょうか。

世界を見渡せば、ナチスが行ったホロコースト。
人を密室に閉じ込めて毒ガスで大量殺戮。

現在でも中東諸国など戦争が行われている地域では、
無抵抗な女性や子供が惨殺されています。
それが当たり前のごとく繰り返されています。
どうしてそんなことができるのでしょうか。

しかしです。

我々がその時代、その場所に置かれたとき、
自分はしないと言い切れるでしょうか。
周りがしているのを、自分は何もせずに
指をくわえて見ているだけ。
そんなことができるでしょうか。

今でこそ、いろんな知識や常識、教養を身に付けはしたが、
生まれたころよりその場所に立たされればどうなるでしょう。
その場所にしか自分の居場所がないとき、
今と同じ感覚でいられるでしょうか。

まず、ありえません。

人はその環境に適した行動を身に付けていきます。
その環境でメリットとなる行動を起こしていきます。

今でも、いろんな犯罪を目の当たりにして
人間の仕業じゃない、人間ができることではない、
そうやって否定することをよく聞きます。

親が実の子を殺す。その逆に、子が親を殺す。
異常な犯罪が頻繁に行われています。

いたいけな子供たちが必死に逃げ惑う背後から、
ためらいもなく刃物を突き刺す。
それも2度3度と。全く持って考えられません。

それを精神病だとか、人格障害だとか、
普通の人間の仕業じゃないような言い方をしています。

精神病や人格障害がそうさせているように受け取っていないでしょうか。

しかし、本当のところは、
あなたと同じ人間であり同じ人間の仕業です。
そこにメリットがあるから起こされてしまうのです。

親にも見離され、誰からも相手にされず、
何をやってもうまくいかない。
何の援助もなく、同情もない。
馬鹿にされ、ののしられ、見捨てられてきた。
そこには犯罪抑止になるものは何もありません。
後は、何をすれば自分にメリットになるかです。
恨みのある人間に対して何をすればいいのか。
自分にとって不快な存在とは何なのか。
そこを突き詰めていけば答えは出てきます。

人は環境の産物です。
その人を作り出す環境があります。
異常というなら、異常を育てる環境があります。

凶悪犯罪は、その人をそうさせた環境があるためです。
異常だとか人格障害とか、病んでいるといって、
その人は特別な人間だ、自分たちとは違っているのだ、
そう言って、つまはじきするのではなく、
その行動がなぜ起こされたのかをしっかり捉え、
その上で対処していかなければなりません。

人を一括りにして枠の中にいれてしまえば、
「健常者と特別な人」といった区別が付きます。

それが一種の安心を与えるのかもしれません。
だからといって、そこに安泰していれば何も変わりません。

人を作っているのは環境です。
犯罪者を捕らえて安心するのではなく、
犯罪者を作り出す環境を変えていかなければなりません。

不良少年を捕まえて少年院へ送り込むだけでなく、
不良少年を作り出す環境こそ見張るべきものです。

金銭目的で自分を身売りする少女を保護するだけでなく、
援助交際を作り出す環境に目を向けなければなりません。

その人をつまはじきにしたところで、
同じような人物を作る環境が存在する限り、
また同じ人間が出現します。

しっかりと見るところを見ないために、
いつまでも同じような事件が繰り返されています。

環境を捉えることは難しいことだと分かっています。
環境自体を変えていくことが難しいことも分かっています。
環境の産物である人間自体をどうにかするほうが簡単なことも分かっています。

簡単だというメリットがあるために、
今まで人にしか目を向けてこなかった。
しかし、それだと、今までのように、
いつまでたっても同じことが繰り返されます。

今、我々が見るべきところは、環境にあります。

(注):異常行動・問題行動の原因は、遺伝的なものや、気質的なものもあります。
    ここでは、環境が原因と考えられるものを前提に述べさせてもらいました。

 まとめ
人はその環境に適した行動を身に付けていきます。
その環境でメリットとなる行動を起こしていきます。

人は環境の産物です。
その人を作り出す環境があります。
異常というなら、異常を育てる環境があります。

その人をつまはじきにしたところで、
同じような人物を作る環境が存在する限り、
からの引用です。