人は変わることができる。
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中学校のときは、見た目も地味で大人しかった人が、高校、大学、社会人となるにつ
れ別人となっていることがよくあります。

駅で中学校のときの同級生に会ったときのことです。
中学校時代はクラスに一人はいる暗い奴で、一緒に話をした記憶がない。話し声も聞
いたことがない。そんな奴が声をかけてきたのだからびっくりした経験があります。

「よ!久しぶり!元気か!」ときたもんです。
驚きのあまり、口が半開きの状態で、うなずくのがやっと。そんな自分の肩をぽんぽ
んと叩いて「じゃな!」と、余裕シャキシャキで立ち去っていったのを覚えています。

その後、友人にその話をすると、友人も同じ目に遭ったといっていました。
聞くところによると、もともと暗い奴だったその同級生は高校からアメリカンフット
ボールをはじめて体育会系になったらしいのです。
それが、どうも彼を変えたようです。


「環境が人を変える」といわれる由縁のこんな心理学の実験があります。
映画「es」のモデルにもなった有名な実験です。

1971年、Philip Zimbardoは、スタンフォード大学心理学部で、
「人は特殊な環境に置かれると、その環境に適した行動を身に付けていく」というこ
とを実験により検証しようとしました。

まず、彼は、実際の刑務所と同じ環境の実験室を作りました。そして、普通の大学生
24人が被験者として選ばれ、囚人役と看守役とに無作為に分けられました。そこで
2週間、1日15ドルという報酬のもと、それぞれの役を演じてもらうといったもの
です。

実験開始まもなく、看守役の被験者はより看守らしく、囚人役の被験者はより囚人ら
しい行動をとるようになります。役が身についてきたというものですね。

しかし、それからしばらくすると、看守は攻撃的な行動が目立つようになります。
囚人はというと、受動的な態度を示すようになります。さらに囚人は次第に無気力に
なっていき、実験開始6日後、この模擬刑務所での実験は中止となります。

楽しんでいるとも思える看守とは対照的に、囚人たちは卑屈になり、情緒不安定にな
り、しまいには心身症の兆候を示す被験者が出たからです。

あくまで実験です。しかし、役割を与えられただけで、自分の人格が変わってしまう。
ドラマや映画の俳優さんが、日常にその役柄が出てしまうことはよく聞く話ですが、
実際に、人は置かれた環境によって変ってしまうのです。

看守の攻撃的な面は、人間の根幹「es」といった今まで隠されていたものが現れ出
たのだという人がいますが、根拠が見えません。

攻撃的な振る舞いをすることは、実験をする上で大切です。本物の刑務所と同じこと
をすることで実験の価値があります。だからこそ攻撃的な行動が起こされます。
また攻撃的になることはストレスを発散させることができます。優越感を感じること
もできます。攻撃的な面が目立つようになるのはそこにメリットがあるからです。

囚人はといえば、卑屈になり、受動的になります。それは、逆らって盾を突こうもの
なら、罰があります。デメリットです。自分の意見や考えは捨てなければなりません。
卑屈になり受動的態度を示すのは置かれた環境の利にかなった行動といえます。

看守も囚人も、なるようにしてなった実験結果ではないでしょうか。


実験のような極端な環境の変化でなくとも、身近にあるちょっとした環境の変化で、
良くも悪くも人は変わっていくものです。

今まで頼りなかった人が、家族ができることで一家の大黒柱としてたくましくなる。
それまではパッとしなかった人が、役職を与えられて責任を持つようになると、
バリバリ仕事をこなすようになる。
少年時代、ご近所で噂だった、うだつの上がらないワルが、仕事を始めると立派な社
会人になっている。

悪い面で言えば、窓際に追いやられた人が、これまで以上に仕事にやる気をなくす。
荒れた環境に身を置くと、生活そのものが杜撰になる。裏社会に足を踏み入れると、
人相までも変わってくる。

「家族ができたからしっかりしないと!」と思うことで変われるものではありません。
「責任があるから真面目に仕事に取り組まなければいけない!」と意識するとこで変
われるものではありません。「もう歳だし、いつまでも好き勝手なことをやっていら
れない」と認識するとこで変われるものではありません。


人が変われるのは、環境がそれを求めているからです。そこにメリットとデメリット
があるからです。

昔から「地位が人を作る」といわれています。しかし、正確には、「環境が人を作る」
といえます。

その人を良くも悪くも変えることができるのは、周りの環境、つまり自分たちでもあ
るのです。

まとめ
人が変われるのは、環境がそれを求めているからです。そこにメリットとデメリット
からの引用です。